みなさん、こんにちは。
基礎医学研究者のTOMOTAROWです。
専門は感染症です。
最近、サル痘という病気がニュースになっています。
感染症学の授業でも学生から質問がありましたので、感染症の専門家として簡単に説明します。
サル痘ってどんな病気なの?
ポックスウイルス科のサル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患です。
昔、天然痘という病原性が強くて致死率の高い恐ろしい感染症があったのですが、同じポックスウイルス科です。
この天然痘は、痘そうワクチンによって撲滅に成功したため、現在は痘そうワクチンは使われていません。
感染症法では4類感染症に位置付けられています。
主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するネズミ類が疑われていますが、現時点ではまだはっきりしていません。
これまでにも、まれにアフリカの流行地以外でも、流行地に滞在した渡航者などに発生した事例がありました。
症状は、発熱と発疹を主体とし、多くは2〜4週間で自然に回復しますが、小さい子供では重症化して死亡した症例の報告もあります。
ポックスウイルス科は、感染細胞の細胞質で増殖します。
遺伝物質として二本鎖DNAを持つ巨大なエンベロープウイルスで、アルコール消毒が良く効きます。
サル痘の感染経路は?
サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変との接触感染が確認されています。
ヒトからヒトへの感染は、起こりにくいとされていますが、濃厚接触者や、リネン類を介した医療従事者への感染が知られていますので、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられています。
日本での感染例は?
日本国内では感染症発生動向調査において、集計が開始された2003年以降、輸入例を含めてサル痘患者の報告はありません。
2022年5月、海外渡航歴のないサル痘患者が英国より報告され、また、欧州、米国でも患者の報告が相次いでおり、調査が進められています。
予防法はあるの?
天然痘のワクチンである痘そうワクチンが、サル痘予防にも有効ですが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていません。
サル痘ウイルスにさらされた後でも、4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果があり、4-14日にワクチン接種した場合は重症化予防に効果があるとされています。
まとめ
欧米で話題になっているサル痘は、天然痘のような恐ろしい感染症ではありません。予防法も確立されていますので、少なくとも日本ではあまり心配する必要はなさそうです。